ChatGPTなどのクラウドAIは便利ですが、機密情報の漏洩リスクやAPIの利用料金が気になりませんか?その悩みを解決するのが、自分のパソコン上でAIを直接動かす「ローカルLLM」です。

この記事では、ローカルLLMの仕組みやクラウドAIとの違い、導入のメリット・デメリットを徹底解説。必要なPCスペックから、初心者でも簡単な始め方の手順、日本語に強いおすすめモデルまで網羅的に紹介します。

読み終えれば、情報漏洩の心配なく、無料で高性能なAIを自由に使いこなせるようになります。

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目次
  1. ローカルLLMとは そもそも何のこと?
    1. 1.1 クラウドで動くAIとの決定的な違い
    2. 1.2 なぜ今ローカルLLMが注目されているのか
  2. ローカルLLMを導入する5つのメリット
    1. 2.1 メリット1 セキュリティとプライバシーの確保
    2. 2.2 メリット2 オフライン環境でAIが利用可能
    3. 2.3 メリット3 API利用料が不要でコストを削減
    4. 2.4 メリット4 応答速度が速く快適に使える
    5. 2.5 メリット5 自由にモデルをカスタマイズできる
  3. 知っておくべきローカルLLMのデメリットと注意点
    1. 3.1 高性能なパソコンが必要になる
    2. 3.2 導入や設定に専門知識が求められる場合がある
    3. 3.3 最新モデルの情報を自分で追う必要がある
  4. ローカルLLMを始めるためのPCスペック要件
    1. 4.1 CPUとメモリの目安
    2. 4.2 最も重要なGPUとVRAMの容量
    3. 4.3 最低限必要なストレージ空き容量
  5. 【初心者でも簡単】ローカルLLMの始め方3ステップ
    1. 5.1 ステップ1 実行ツールをインストールする
      1. 5.1.1 GUIで簡単なLM Studio
      2. 5.1.2 CUIで便利なOllama
    2. 5.2 ステップ2 使いたいLLMモデルを選ぶ
    3. 5.3 ステップ3 モデルをダウンロードしてAIと対話を開始
  6. 日本語対応のおすすめローカルLLMモデル5選
    1. 6.1 Llama 3
    2. 6.2 Mistral
    3. 6.3 Gemma
    4. 6.4 ELYZA-japanese-Llama-2
    5. 6.5 Command R
  7. ローカルLLMの便利な活用事例
    1. 7.1 機密情報を含む社内文書の要約や翻訳
    2. 7.2 インターネット接続がない場所でのアイデア出し
    3. 7.3 プログラミングのコード作成とデバッグ支援
  8. まとめ

ローカルLLMとは そもそも何のこと?

ローカルLLMとは、自身のパソコン(ローカル環境)や社内サーバー(オンプレミス)上で直接動作させる大規模言語モデル(Large Language Model)のことです。通常、ChatGPTやGoogleのGeminiといった生成AIサービスは、提供企業の管理する巨大なサーバー(クラウド)上で実行され、私たちはインターネット経由でその機能を利用します。これに対し、ローカルLLMはAIモデルそのものを自分のPCにダウンロードし、外部のサーバーを介さずにAIとの対話や処理を行います。

インターネット接続が不要で、入力したデータが外部に送信されることが一切ないため、情報漏洩のリスクを根本から排除できるのが最大の特徴です。このため、機密情報や個人情報を取り扱うビジネスシーンでの活用や、プライバシーを重視する個人の利用において、急速に注目度が高まっています。

1.1 クラウドで動くAIとの決定的な違い

ローカルLLMと、ChatGPTに代表されるクラウドベースのAIサービスは、同じ「大規模言語モデル」という技術を基にしていますが、その仕組みや特性には明確な違いがあります。両者の違いを理解することは、どちらが自分の目的に合っているかを判断する上で非常に重要です。以下の表で、それぞれの特徴を比較してみましょう。

比較項目ローカルLLMクラウドAI (ChatGPTなど)
実行環境個人のPC、社内サーバーサービス提供企業のサーバー(クラウド)
データプライバシーデータが外部に送信されず、極めて安全データが外部サーバーに送信され、学習に利用される可能性も
インターネット接続不要(オフラインで利用可能)必須
コスト初期投資(PC)は必要だが、API利用料などの継続費用は発生しない無料プランもあるが、高機能版は月額料金やAPI利用料が発生
応答速度PCの性能に依存するが、ネットワーク遅延がなく安定サーバーの混雑状況に影響されることがある
カスタマイズ性モデルの選択やパラメータ調整など、自由度が非常に高い提供される機能の範囲内に限定される
導入の手間環境構築や設定に一定の知識が必要な場合があるアカウントを登録すればすぐに利用可能

このように、手軽さではクラウドAIに軍配が上がりますが、セキュリティ、コスト、自由度の面ではローカルLLMが圧倒的に優位です。どちらか一方が絶対的に良いというわけではなく、用途に応じて使い分けることが賢明と言えるでしょう。

1.2 なぜ今ローカルLLMが注目されているのか

近年、ローカルLLMへの関心が急速に高まっています。その背景には、単に「PCでAIを動かせる」という技術的な興味だけでなく、現代のビジネスや個人のニーズに合致した、いくつかの重要な要因があります。

第一に、企業におけるセキュリティとコンプライアンス意識の高まりが挙げられます。生成AIの業務利用が広がる一方で、社内の機密情報や顧客の個人情報を外部のクラウドサービスに入力することへの懸念は増大しています。情報漏洩は企業の信頼を根底から揺るがす重大なリスクであり、データを完全に内部で管理できるローカルLLMは、その最も確実な解決策として注目されています。

第二に、高性能なオープンソースLLMの登場です。Meta社が開発した「Llama」シリーズや、フランスのスタートアップ企業Mistral AIが公開したモデルなど、プロプライエタリなモデルに匹敵する、あるいは特定のタスクでは凌駕するほどの性能を持つオープンソースモデルが次々と登場しています。これにより、誰でも無料で高性能なAIモデルを入手し、自分の環境で動かすことが現実的になりました。

そして最後に、個人向けPCの性能向上も大きな追い風となっています。特に、AIの計算処理に不可欠なGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)の性能が飛躍的に向上し、多くのVRAM(ビデオメモリ)を搭載したモデルが普及したことで、大規模なLLMを個人のPCで快適に動作させるためのハードルが格段に下がりました。

これらの「セキュリティ需要」「高性能モデルの民主化」「ハードウェアの進化」という3つの要素が組み合わさった結果、開発者や研究者だけでなく、一般のビジネスパーソンやクリエイターにとっても、ローカルLLMは身近で強力なツールとして認識され始めているのです。

ローカルLLMを導入する5つのメリット

クラウドベースのAIとは一線を画すローカルLLMには、多くの魅力的なメリットが存在します。なぜ今、多くの技術者や企業がローカル環境でのAI構築に注目しているのか、その具体的な利点を5つの側面から詳しく見ていきましょう。

2.1 メリット1 セキュリティとプライバシーの確保

ローカルLLMを導入する最大のメリットは、機密情報や個人情報を外部に送信することなくAIを利用できる点にあります。クラウド型のAIサービスでは、入力したプロンプト(指示文)や会話履歴が、サービス提供者のサーバーに送信されます。利用規約によっては、これらのデータがAIの学習に利用されたり、予期せぬ形で外部に漏洩したりするリスクがゼロではありません。

実際に、多くの企業では情報漏洩対策として、ChatGPTなどの外部AIサービスへの機密情報の入力を禁止しています。しかし、ローカルLLMはすべての処理がご自身のパソコン内で完結します。データがインターネットを経由して外部サーバーに渡ることは一切ないため、情報漏洩のリスクを根本的に排除できます。これにより、以下のような秘匿性の高い情報も安心してAIで扱うことが可能になります。

  • 企業の財務データや経営戦略に関する情報
  • 未公開の研究開発データやソースコード
  • 顧客の個人情報や取引履歴
  • カルテなどの医療情報や、法律相談の内容

プライバシーとセキュリティを最優先事項とする現代において、これは計り知れない価値を持つメリットと言えるでしょう。

2.2 メリット2 オフライン環境でAIが利用可能

クラウドAIの利用には、常時インターネット接続が必須です。しかし、ローカルLLMは自分のPC上で直接動作するため、インターネット接続が一切ないオフライン環境でも問題なく使用できます

例えば、次のような状況でも、思考のパートナーとしてAIを活用し続けることができます。

  • 飛行機や新幹線での移動中
  • Wi-Fi環境が整備されていないカフェや出張先のホテル
  • 山間部やトンネル内など、電波の届かない場所
  • 災害発生時など、通信インフラが不安定な状況

インターネット環境に依存せずに、いつでもどこでも安定してAIの能力を引き出せる点は、特に移動が多いビジネスパーソンや、フィールドワークを行う研究者、クリエイターにとって大きな強みとなります。

2.3 メリット3 API利用料が不要でコストを削減

高性能なクラウドAIをAPI経由で利用する場合、処理したテキストの量(トークン数)に応じた従量課金制の料金が発生します。特に、大量のドキュメントを要約させたり、AIを組み込んだアプリケーションを開発したりすると、API利用料は月々数万円から数十万円に達することも珍しくありません。

一方、ローカルLLMは、一度モデルをダウンロードしてしまえば、その後は何度利用しても追加の費用はかかりません。高性能なPCを用意するための初期投資は必要ですが、ランニングコストは電気代のみです。これにより、コストを気にすることなく、心ゆくまでAIとの対話や開発、実験に没頭できます。

クラウドAIとローカルLLMのコスト構造の違いを以下の表にまとめました。

比較項目クラウドAI (API利用)ローカルLLM
初期費用ほぼゼロ高(高性能なPCが必要)
ランニングコスト従量課金(利用量に比例して増加)ほぼゼロ(電気代のみ)
特徴手軽に始められるが、継続的な利用でコストがかさむ。初期投資は必要だが、一度導入すれば使い放題。

特に個人開発者や研究者、スタートアップなど、予算が限られている場合に、このコストメリットは非常に大きな魅力となるでしょう。

2.4 メリット4 応答速度が速く快適に使える

クラウドAIを利用する際、「応答が返ってくるまで少し待たされる」と感じたことはありませんか?これは、自分のPCからインターネットを経由して遠くのサーバーと通信するために発生する時間の遅れ(ネットワークレイテンシ)や、サーバー側の混雑が原因です。

ローカルLLMは、PCの性能が許す限り、ネットワークの遅延を一切気にすることなく、極めて高速な応答を得られます。プロンプトを入力した直後に、まるでPC内にいるアシスタントが即答してくれるような、ストレスフリーな対話体験が可能です。この速度は、特に次のような場面で生産性を劇的に向上させます。

  • プログラミング中に、短いコードの生成や修正を何度も繰り返す
  • アイデア出しのために、短い質問をテンポよく投げかける
  • リアルタイムでの翻訳や文章校正

思考の流れを妨げない高速なレスポンスは、作業への集中力を維持し、より創造的なタスクに時間を使うことを可能にします。

2.5 メリット5 自由にモデルをカスタマイズできる

クラウドAIは非常に高性能ですが、提供されているモデルをそのまま利用することが基本となり、ユーザー側で自由に改造することは困難です。しかし、ローカルLLMの世界では、オープンソースとして公開されている多種多様なモデルが数多く存在します。

これらのモデルをベースに、特定の目的やデータに合わせてモデルを調整(ファインチューニング)できるのが、ローカルLLMの大きな魅力です。例えば、以下のような独自のAIを自分の手で作り出すことができます。

  • 自社の社内文書やマニュアルを追加学習させた「社内業務特化AIアシスタント」
  • 特定の作家の文体を学習させた「小説執筆支援AI」
  • 特定のキャラクターの口調や性格を再現した「対話用チャットボット」
  • 特定のフレームワークに精通した「プログラミング専門AI」

専門知識は必要になりますが、モデルのパラメータを調整して出力の傾向を変えたり、独自のデータで性能を向上させたりと、その可能性は無限大です。自分の手でAIを「育てる」楽しみを味わえるのも、ローカルLLMならではの醍醐味と言えるでしょう。

知っておくべきローカルLLMのデメリットと注意点

ローカルLLMは、セキュリティやコスト面で大きなメリットがある一方、導入する前に必ず知っておくべきデメリットや注意点も存在します。クラウドベースのAIサービスのように誰もが手軽に始められるわけではなく、いくつかのハードルがあるのが実情です。ここでは、ローカルLLMを検討する上で重要な3つのポイントを詳しく解説します。

デメリットの項目具体的な内容特に注意が必要な方
高性能なパソコンが必要AIモデルを動かすために、特にグラフィックボード(GPU)の性能が求められ、高額な初期投資が必要になります。PCのスペックに詳しくない方、初期費用を抑えたい方
導入や設定の難しさツールのインストールや設定、トラブル対応など、ある程度の専門知識やITリテラシーが求められる場合があります。プログラミングやPCの複雑な設定が苦手な方
情報収集・更新の手間新しいモデルの登場や技術の進化が速いため、自分で情報を追いかけ、環境をアップデートし続ける必要があります。常に最新のAIを手間なく使いたいと考えている方

3.1 高性能なパソコンが必要になる

ローカルLLMを快適に動作させるための最大の障壁は、高性能なパソコン、特に強力なGPU(グラフィックボード)が必須となる点です。一般的な事務作業用のノートパソコンでは、大規模な言語モデルを動かすことは非常に困難です。

LLMは、その賢さの源である「パラメータ」と呼ばれる膨大なデータを保持しており、その計算処理のほとんどをGPUが担います。特に重要になるのが、GPUに搭載されている「VRAM(ビデオメモリ)」の容量です。高性能なモデルほど多くのVRAMを消費するため、VRAM容量が少ないPCでは、モデルを読み込むことすらできない場合があります。

そのため、ローカルLLMを本格的に活用するには、最低でも12GB以上、できれば24GB以上のVRAMを搭載したGPUを備えたゲーミングPCやクリエイター向けPCが必要となり、数十万円の初期投資が発生する可能性が高いことを覚悟しなければなりません。これは、月額料金で利用できるクラウドAIサービスとの大きな違いと言えるでしょう。

3.2 導入や設定に専門知識が求められる場合がある

ChatGPTのように、Webサイトにアクセスしてアカウントを登録すればすぐに使えるクラウドAIとは異なり、ローカルLLMは導入や初期設定に手間と専門知識が求められることがあります。

近年ではGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)で比較的簡単に操作できるツールも増えてきましたが、より高度なカスタマイズや特定のモデルを利用する際には、CUI(キャラクター・ユーザー・インターフェース)、いわゆる「黒い画面」でのコマンド入力が必要になる場面も少なくありません。

また、「モデルがうまく動かない」「エラーメッセージが表示される」といったトラブルが発生した際には、自分で原因を調査し、解決策を見つけ出す必要があります。その過程で、開発者が情報共有に利用するGitHubのページや、英語で書かれた技術ドキュメントを読み解くスキルも求められます。PCの操作に不慣れな方や、トラブルシューティングが苦手な方にとっては、これが高いハードルとなる可能性があります。

3.3 最新モデルの情報を自分で追う必要がある

クラウドAIサービスは、運営会社がバックグラウンドでモデルのアップデートを行ってくれるため、ユーザーは常に最新または最適化されたAIを利用できます。しかし、ローカルLLMの場合は、新しいモデルに関する情報を自分で収集し、手動で環境を更新し続ける必要があります

AIの世界は日進月歩で、毎月のように新しい、より高性能なモデルが公開されています。これらの恩恵を受けるためには、AI関連のニュースサイトや、世界中の開発者がモデルを公開しているプラットフォーム「Hugging Face」などを定期的にチェックし、有望なモデルを見つけ出す必要があります。

そして、新しいモデルを利用するためには、数GBから数十GBにもなるモデルファイルを新たにダウンロードし、自分が使っている実行ツールに正しく設定し直す作業が発生します。こうした継続的な情報収集とメンテナンスの手間を許容できるかどうかも、ローカルLLMを導入する上での重要な判断基準となるでしょう。

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ローカルLLMを始めるためのPCスペック要件

ローカルLLMをPCで動かすには、一般的な事務作業やウェブ閲覧で使うPCよりも高い性能が求められます。特に、AIの計算処理を担うGPUの性能が重要です。ここでは、ローカルLLMを快適に動作させるために必要なPCスペックの目安を、パーツごとに詳しく解説します。

4.1 CPUとメモリの目安

ローカルLLMの動作において、主役はGPUですが、CPUとメインメモリ(RAM)も縁の下の力持ちとして重要な役割を担います。これらの性能が低いと、モデルの読み込みが遅くなったり、システム全体が不安定になったりする可能性があります。

CPUは、LLMの推論処理そのものよりも、データの前処理やモデルの読み込み、OS全体の動作を支えるために重要です。最近のモデルであれば、Intel Core i5やAMD Ryzen 5以上を搭載したPCが一つの目安となります。より快適な動作を求めるなら、Core i7/Ryzen 7以上が推奨されます。

また、Apple製のMacに搭載されているApple Silicon(M1, M2, M3チップなど)も有力な選択肢です。Apple Siliconは「ユニファイドメモリアーキテクチャ」という特徴を持ち、CPUとGPUが同じメモリを共有します。これにより、GPUのVRAM容量という制約を受けにくく、大容量のメモリを搭載すれば、比較的大きなモデルも動かしやすいというメリットがあります。

メインメモリ(RAM)は、実行したいLLMモデルのサイズに大きく依存します。モデルをメモリ上に展開して利用するため、最低でもモデルのファイルサイズ以上のRAM容量が必要です。快適に動作させるには、OSや他のアプリケーションが使用する分も考慮し、余裕を持った容量を確保することが重要です。

目的推奨メモリ容量備考
小規模なモデル(〜7B)を試す16GB多くのモデルで最低限必要となるラインです。
中規模なモデル(〜13B)を快適に動かす32GB複数のアプリケーションと並行して利用する場合にも安心です。
大規模なモデル(30B〜)の利用を検討64GB以上より高性能なモデルや、複数のモデルを同時に扱う場合に必要です。

4.2 最も重要なGPUとVRAMの容量

ローカルLLMの性能を最も左右するのが、GPU(グラフィックボード)とそのVRAM(ビデオメモリ)容量です。LLMの推論(テキスト生成)処理は、膨大な量の並列計算を高速に実行する必要があり、この処理はGPUが最も得意とするところです。ローカルLLMを快適に利用できるかどうかは、VRAM容量で決まると言っても過言ではありません。

VRAMは、LLMのモデルデータを一時的に保存しておくための専用メモリです。モデル全体をVRAM内に収めることができれば、非常に高速な推論が可能になります。VRAM容量が不足していると、メインメモリやストレージとの間でデータのやり取りが発生し(これを「スワップ」と呼びます)、応答速度が極端に低下してしまいます。

現在、ローカルLLM用途では、AI開発環境「CUDA」との親和性が高いNVIDIA社のGeForceシリーズが最も一般的な選択肢となっています。以下に、動かしたいモデルのパラメータサイズと、推奨されるVRAM容量の目安を示します。

モデルのパラメータサイズ推奨VRAM容量(目安)代表的なGPU
3B〜7B(小規模)8GB以上NVIDIA GeForce RTX 3050, RTX 4060
7B〜13B(中規模)12GB〜16GBNVIDIA GeForce RTX 3060 (12GB), RTX 4060 Ti (16GB)
13B〜34B(大規模)24GBNVIDIA GeForce RTX 3090, RTX 4090
70B以上(超大規模)48GB以上RTX 4090 (24GB) ×2枚刺し、プロ向けGPUなど

なお、上記は非圧縮のモデルを動かす場合の目安です。「量子化」という技術を使ってモデルを軽量化した場合は、より少ないVRAM容量でも動作させることが可能です。例えば、4bit量子化されたモデルであれば、理論上は元の約4分の1のVRAM容量で動かすことができます。初心者のうちは、まずは8GB〜12GBのVRAMを搭載したGPUから始めてみるのが良いでしょう。

4.3 最低限必要なストレージ空き容量

ローカルLLMのモデルファイルは非常にサイズが大きいため、ストレージにも十分な空き容量が必要です。モデルによっては、1つダウンロードするだけで数十GBを消費することもあります。

ストレージの種類は、データの読み書き速度が高速なSSD(ソリッドステートドライブ)が必須です。特に、OSやアプリケーションの起動も高速になるNVMe M.2 SSDが推奨されます。HDD(ハードディスクドライブ)では、モデルの読み込みに非常に時間がかかり、実用的ではありません。

容量については、さまざまなモデルを試すことを想定し、最低でも50GB、できれば100GB以上の空き容量を確保しておくことをお勧めします。例えば、人気の「Llama 3」の非量子化モデルの場合、8B(80億パラメータ)モデルで約16GB、70B(700億パラメータ)モデルでは約140GBもの容量が必要になります。複数のモデルや、異なる量子化版をダウンロードしていると、あっという間に容量が埋まってしまうため、余裕を持ったストレージ計画を立てましょう。

【初心者でも簡単】ローカルLLMの始め方3ステップ

ローカルLLMの環境構築と聞くと、専門的な知識が必要で難しそうだと感じるかもしれません。しかし、現在では初心者でも簡単に始められるツールが充実しており、手順さえ踏めば誰でも自宅のPCでAIを動かすことが可能です。ここでは、PCにローカルLLMを導入するための具体的な方法を、3つのステップに分けて分かりやすく解説します。

5.1 ステップ1 実行ツールをインストールする

まず、ローカルLLMをPC上で動かすための「実行ツール(ランチャー)」をインストールします。このツールが、LLMモデルのダウンロードや管理、そして対話インターフェースの役割を果たしてくれます。初心者の方には、直感的に操作できるGUIツールがおすすめです。代表的なツールとして「LM Studio」と「Ollama」の2つを紹介します。

ツール名操作方法特徴おすすめのユーザー
LM StudioGUI(マウス操作)モデルの検索からチャットまで、全ての操作が1つのアプリ内で完結する。設定も画面上で変更可能。プログラミング経験がない初心者、手軽に始めたい方
OllamaCUI(コマンド操作)軽量で動作が速い。APIサーバーとしても機能するため、他のアプリケーションとの連携や開発に向いている。コマンド操作に慣れている中級者以上、開発者

5.1.1 GUIで簡単なLM Studio

LM Studioは、プログラミングの知識が一切なくても、マウス操作だけでローカルLLMを始められる非常に優れたツールです。モデルの検索、ダウンロード、チャット、パラメータ調整といった必要な機能がすべて一つのアプリケーションにまとまっています。

インストールはとても簡単です。まずLM Studioの公式サイトにアクセスし、お使いのOS(Windows, macOS, Linux)用のインストーラーをダウンロードします。ダウンロードしたファイルを実行し、画面の指示に従ってインストールを進めれば準備完了です。複雑な設定は一切必要ありません。

5.1.2 CUIで便利なOllama

Ollamaは、コマンドプロンプトやターミナルといった黒い画面(CUI)で操作する実行ツールです。GUIはありませんが、その分軽量で、コマンド一つでモデルの実行から対話まで行える手軽さが魅力です。また、ローカルAPIサーバーを簡単に立てられるため、自作のアプリケーションにAI機能を組み込みたい開発者にも人気があります。

インストールはOllamaの公式サイトから行います。Windows版とmacOS版はインストーラーをダウンロードして実行するだけです。Linuxの場合は、サイトに記載されているコマンドをターミナルにコピー&ペーストして実行すればインストールが完了します。インストール後は、`ollama run [モデル名]` という簡単なコマンドで、すぐにAIとの対話を始められます。

5.2 ステップ2 使いたいLLMモデルを選ぶ

実行ツールをインストールしたら、次はいよいよAIの「脳」となるLLMモデルを選びます。モデルには無数の種類が存在し、それぞれ性能や得意なタスク(日本語能力、コーディング能力など)、動作に必要なPCスペックが異なります。

モデルを探すには、AIモデルの巨大な共有プラットフォームである「Hugging Face」が最も有名です。LM StudioやOllamaのツール内からも、このHugging Faceにアップロードされているモデルを直接検索・ダウンロードできます。

モデルを選ぶ際の重要なポイントは「量子化(Quantization)」です。これは、モデルの性能を極力維持したまま、ファイルサイズを圧縮して軽量化する技術です。量子化されたモデル(ファイル形式はGGUFが主流)を選ぶことで、VRAM(ビデオメモリ)が少ないPCでも高性能なモデルを動かせる可能性が広がります。モデル名の末尾にある「Q4_K_M」や「Q5_K_S」といった表記が量子化のレベルを示しており、一般的に数字が大きいほど高品質・高負荷になります。まずは「Q4_K_M」あたりから試してみるのがおすすめです。

5.3 ステップ3 モデルをダウンロードしてAIと対話を開始

最後のステップです。使いたいモデルを決めたら、実行ツールを使ってPCにダウンロードし、AIとの対話を開始しましょう。

LM Studioの場合:

  1. アプリ左側の検索アイコンをクリックします。
  2. 検索バーに使いたいモデル名(例: `Llama 3`)を入力して検索します。
  3. 検索結果からモデルを選び、右側に表示されるファイル一覧の中から、自分のPCスペックに合った量子化レベルのファイル(例: `Q4_K_M.gguf`)の「Download」ボタンを押します。
  4. ダウンロードが完了したら、左側のチャットアイコンをクリックします。
  5. 画面上部の「Select a model to load」から、先ほどダウンロードしたモデルを選択すれば、チャットを開始できます。

Ollamaの場合:

  1. PCのターミナル(WindowsならコマンドプロンプトやPowerShell)を起動します。
  2. `ollama run [モデル名]` というコマンドを入力します。例えば、Llama 3の8Bモデルを使いたい場合は `ollama run llama3` と入力してEnterキーを押します。
  3. 初回実行時は、Ollamaが自動的にモデルのダウンロードを開始します。
  4. ダウンロードが完了すると、プロンプトが表示され、そのままターミナル上でAIとの対話を始められます。

注意点として、LLMのモデルファイルは数GBから数十GBと非常にサイズが大きいため、ダウンロードには時間がかかる場合があります。安定した高速なインターネット回線と、PCのストレージに十分な空き容量を確保しておきましょう。これで、あなただけのプライベートなAIアシスタントがPC上で動き始めます。

日本語対応のおすすめローカルLLMモデル5選

ローカルLLMを始めるにあたって、最も悩むのが「どのモデルを使えば良いのか」という点でしょう。現在、世界中の開発者や企業が高性能なモデルを次々と公開しており、選択肢は非常に豊富です。ここでは、特に日本語の扱いに長けており、ローカル環境での利用実績も多い、おすすめのLLMモデルを5つ厳選してご紹介します。それぞれの特徴を比較し、あなたの目的やPCスペックに合った最適なモデルを見つけましょう。

6.1 Llama 3

Meta社が開発した、現在最も注目されているオープンモデルの一つが「Llama 3」です。前モデルのLlama 2から大幅に性能が向上し、特に指示応答能力や多言語対応能力が強化されました。公開されている8B(80億パラメータ)モデルと70B(700億パラメータ)モデルは、どちらもオープンソースモデルの中でトップクラスの性能を誇り、日本語の生成能力も非常に高いレベルにあります。最新かつ最高の性能をローカルで試したい方に最適な選択肢ですが、特に70Bモデルを快適に動かすには、相応のハイスペックなPCが必要となります。

項目内容
開発元Meta
主なパラメータサイズ8B, 70B
特徴・全体的に非常に高い性能
・ファインチューニングなしでも自然な日本語を生成
・世界中の開発者から利用されており情報が豊富
推奨VRAM(目安)8B: 8GB以上
70B: 24GB × 2枚など

6.2 Mistral

フランスのAIスタートアップMistral AIが開発したモデル群です。特に「Mistral 7B」は、7Bという比較的小さなパラメータサイズながら、より大きなモデルに匹敵する性能を発揮することで大きな注目を集めました。軽量でありながら高いパフォーマンスを出すコストパフォーマンスの良さが最大の魅力です。また、複数の専門家(Experts)を組み合わせた「Mixtral 8x7B」というMoE(Mixture of Experts)モデルも公開されており、こちらはLlama 3 70Bに迫る性能を持っています。Apache 2.0ライセンスで公開されており、商用利用しやすい点も人気の理由です。

項目内容
開発元Mistral AI
主なパラメータサイズ7B, 8x7B (MoE)
特徴・軽量で高速に動作する(特に7Bモデル)
・性能とリソース消費のバランスが非常に良い
・商用利用しやすいライセンス
推奨VRAM(目安)7B: 8GB以上
8x7B: 48GB以上

6.3 Gemma

Googleが開発したオープンモデルで、同社の高性能モデル「Gemini」と同じ技術基盤から作られています。2B(20億)と7B(70億)という、ローカル環境で扱いやすいサイズで提供されているのが特徴です。特に2Bモデルは、要求されるPCスペックが比較的低く、ローカルLLMの入門用として最適です。Googleが開発しているという安心感と、比較的自由なライセンス条件から、個人開発者から企業まで幅広く利用されています。日本語性能も良好で、一般的な対話や文章生成タスクで十分な能力を発揮します。

項目内容
開発元Google
主なパラメータサイズ2B, 7B
特徴・Googleの最新技術を基に開発
・2Bモデルは低スペックPCでも動作させやすい
・幅広い用途で利用できるバランスの取れた性能
推奨VRAM(目安)2B: 4GB以上
7B: 8GB以上

6.4 ELYZA-japanese-Llama-2

日本のAI企業である株式会社ELYZAが、Metaの「Llama 2」をベースに日本語能力を強化したモデルです。海外製のモデルは多言語対応の一環として日本語を学習していますが、このモデルは日本語に特化して追加学習(ファインチューニング)されているため、非常に自然で高品質な日本語を生成できるのが最大の強みです。日本の文化や社会的な文脈を理解した、より的確な応答が期待できます。日本語での文書作成、要約、質疑応答といったタスクで特に高い性能を発揮するため、日本語の品質を最優先したい場合に第一候補となるモデルです。モデルはHugging Faceで公開されています。

項目内容
開発元株式会社ELYZA
主なパラメータサイズ7B
特徴・日本語に特化しており、極めて自然な文章を生成
・日本の文脈理解度が高い
・Llama 2ベースで安定した性能
推奨VRAM(目安)7B: 8GB以上

6.5 Command R

エンタープライズ向けのAI開発で知られるCohere社が公開した、実用的なタスクに強いモデルです。特に、社内文書などの外部知識を参照しながら回答を生成する「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」や、他のツールと連携する能力に優れています。35Bという比較的大規模なモデルで、日本語を含む10言語に対応しています。単なる対話だけでなく、特定のドキュメントに基づいた正確な回答生成や、業務の自動化といったビジネスユースを想定している場合に非常に強力な選択肢となります。その分、動作には高性能なPCが必要ですが、より高度で実用的な活用を目指すユーザーにおすすめです。

項目内容
開発元Cohere
主なパラメータサイズ35B
特徴・RAG(検索拡張生成)やツール連携に最適化
・ビジネス用途など実用的なタスクに強い
・多言語対応で日本語の精度も高い
推奨VRAM(目安)35B: 24GB以上

ローカルLLMの便利な活用事例

ローカルLLMは、その特性を活かすことで、クラウドベースのAIサービスでは難しかった様々な用途に活用できます。特にセキュリティ、オフライン利用、カスタマイズ性といったメリットが、具体的なビジネスシーンや個人の生産性向上に直結します。ここでは、ローカルLLMの能力を最大限に引き出す便利な活用事例を3つのカテゴリに分けて詳しく解説します。

7.1 機密情報を含む社内文書の要約や翻訳

ビジネスシーンでは、機密情報や個人情報を含む文書を取り扱う機会が頻繁にあります。クラウドAIを利用する場合、これらの情報を外部サーバーに送信することになり、情報漏洩のリスクが懸念されます。しかし、ローカルLLMであれば、すべての処理が手元のPC内で完結するため、外部にデータが一切送信されません。このため、セキュリティを最優先事項とする業務で絶大な効果を発揮します。

具体的な活用例は以下の通りです。

  • 会議議事録の要約:長時間の会議の音声データを文字起こしした後、そのテキストをローカルLLMに読み込ませることで、決定事項、ToDoリスト、担当者を瞬時に抽出・要約できます。機密性の高い経営会議の内容でも安心して処理できます。
  • 契約書や法務文書のレビュー:NDA(秘密保持契約)や業務委託契約書などの内容をLLMに分析させ、リスクとなりうる条項や曖昧な表現を指摘させることが可能です。法務担当者のチェック業務を効率化する補助ツールとして役立ちます。
  • 社内向け資料の翻訳:海外拠点を持つ企業において、社内規定やマニュアル、研修資料などを他言語に翻訳する際に活用できます。外部の翻訳サービスに機密情報を渡す必要がなく、迅速にドラフトを作成できます。
  • 顧客データの分析:個人情報を含む顧客からの問い合わせメールやアンケート回答を分析し、製品改善のヒントや新たなニーズを発見する際にも、情報を外部に出すことなく安全に実行できます。

7.2 インターネット接続がない場所でのアイデア出し

ローカルLLMのもう一つの大きな利点は、インターネット接続が不要なオフライン環境で利用できることです。これにより、場所や通信環境に縛られることなく、いつでもAIを思考のパートナーとして活用できます。移動中の新幹線や飛行機、電波の届きにくい山間部の施設など、これまでデッドタイムになりがちだった時間を有効活用し、創造的な作業に集中できます。

例えば、以下のようなシーンで役立ちます。

  • 移動中の企画立案:出張中の飛行機内で、次のプロジェクトの企画書構成案をLLMと壁打ちしながら練り上げる。様々な切り口からアイデアの深掘りを手伝ってもらうことで、一人では思いつかなかった視点を得られます。
  • プレゼンテーションのシナリオ作成:Wi-Fi環境が不安定なカフェで、プレゼンの聴衆の心に響くストーリーラインや、説得力のある言い回しをLLMに提案してもらうことができます。
  • クリエイティブライティング:小説のプロット作成やキャラクター設定、ブログ記事の執筆など、集中して取り組みたい作業をオフライン環境で進められます。インターネットの誘惑に邪魔されず、執筆活動に没頭できます。

このように、ローカルLLMは思考を整理し、発想を広げるための強力なブレインストーミングツールとして、あらゆる場所で活躍します。

7.3 プログラミングのコード作成とデバッグ支援

開発者にとって、ローカルLLMは生産性を劇的に向上させる強力な武器となり得ます。開発中のソースコードは企業の知的財産そのものであり、安易に外部サービスにアップロードすることはセキュリティポリシー上許されないケースがほとんどです。ローカルLLMを使えば、開発環境内でソースコードを扱うため、情報漏洩のリスクをゼロにしながらAIの支援を受けることができます。また、APIの呼び出し時間が不要なため応答が速く、コーディングとデバッグのサイクルを高速化できる点も大きなメリットです。

開発現場における具体的なタスクと活用例を以下の表にまとめました。

タスクの種類具体的な活用例
コード生成「Pythonで指定したフォルダ内の画像を一括でリサイズするスクリプト」といった具体的な指示で、定型的なコードを素早く生成させる。
デバッグ発生したエラーメッセージと関連するコードを提示し、バグの原因となっている可能性のある箇所や修正案を提示させる。
リファクタリング既存のコードをより効率的で読みやすい形に書き直すための改善案(変数名の変更、関数の分割など)を提案させる。
ドキュメント作成関数やクラスの動作を説明するコメント(Docstringなど)を自動生成させたり、コードから仕様書(マークダウン形式など)のドラフトを作成させたりする。
学習・調査新しいプログラミング言語やフレームワークの基本的な使い方について質問したり、特定のライブラリのサンプルコードを生成させたりして学習効率を高める。

これらの活用により、開発者は単純作業から解放され、より創造的で本質的な課題解決に集中できるようになります。

まとめ

本記事では、PC上でAIを動かすローカルLLMの概要から始め方までを解説しました。クラウドAIと違い、データを外部に送信しないため、情報漏洩のリスクを完全に排除できる点が最大のメリットです。これにより、機密情報も安心してAIで扱うことができます。オフライン利用やコスト削減も魅力ですが、導入には高性能なPCが必要という注意点もあります。LM Studioのようなツールを使えば初心者でも簡単に導入可能です。この記事を参考に、安全で快適なAI環境を構築してみましょう。

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